未経験からIT業界へ。後悔したくないからこそ、自分に正直に歩んできた
水産物仲卸会社の正社員、警備会社、イベント関連会社のアルバイトを経て、全くの未経験からIT業界に飛び込んだ経歴を持つ横尾高弘さん。派遣先の情報通信会社では、顧客対応で経験者に引けを取らない成果を挙げ、支店のMVPも獲得しました。決して平坦ではなかったこれまでの道のりと、そのチャレンジを可能にしたという現在の働き方について伺いました。
目次
今、立っているのは
かつて「想像もしなかった未来」
― 現在の仕事内容を教えてください。
2017年7月にスタッフサービス・エンジニアリングに入社し、情報通信会社で就業しています。クライアントは、クリニックや薬局などの医療機関。医療費計算のシステムが導入されたパソコンやプリンターの点検作業、障害が起きた際の対応が主な業務です。特に不具合が直って、お客様から「ありがとうございました!」と感謝の言葉をかけてもらう瞬間にやりがいを感じますね。
業界は未経験だったので、初めは分からないことだらけの状態からスタートしましたが、独学や実地経験を積むに連れてだんだん自信もついてきました。
実は私は大学を中退していて、「自分の進みたい道」を見つけるのにかなりの時間を必要としました。10年ほど前の自分が想像もしなかった未来に今、立っているという感じです。
― 大学を中退された理由は何だったのでしょうか?
大きく2つあります。1つ目は、勉学より部活動の方に力を入れてしまったこと。所属は吹奏楽部でしたが、ノリは体育会系。平日も週末も毎日夜遅くまで練習で、コンサートや定期演奏会の直前になると、朝練もありました。生活の中心がそちらにあったので、授業に思うように身が入らなかったのです。
もう1つは、大学で学んでいることの延長線上に、自分のキャリアを描けなかったこと。法学部だったのですが、実際に学んでみると、法律関係のことにどうしても関心が持てなくて。大きな教室で、ひたすら受け身で教授の話を聞くという当時の授業スタイルに馴染めない部分もありました。このまま漫然と勉強して、何となく就職していっていいのだろうか。そんなモヤモヤした気持ちでいっぱいでしたね。そこで、とりあえず中退をして、働きながら今後の進路を見定めたいと考えるに至りました。
さまざまな職場を経験して
探し続けた「自分の道」
― 中退した年に、水産物の仲卸会社に就職されましたね。
きっかけは、第二新卒の求職者と企業をマッチングする、人材会社主催の合同就職説明会でした。いくつかの企業の面接を受けた中で、社長の人となりがとても生き生きとして、自分も楽しく働けそうなイメージが持てたんです。
― 入社してみて、いかがでしたか?
仕入れた水産物を小売業者などへ卸すのが毎日の仕事でした。市場でのやり取りは活気に溢れていて、楽しかったです。
ただ一方で、とてもハードでした。午前2時に起床して出社し、事務作業や営業など1日の業務を終えるのは午後6時頃。昼夜逆転の生活が続いたことで、1年半ほどで体調を崩してしまいました。また、もう少し他の分野の仕事を経験してみたいという気持ちも生まれていましたね。
― その後、警備会社で約5年、イベント関連会社で約2年、アルバイトとして勤務されたんですね。
正直、「自分の進みたい道」がまだはっきりせず、いろいろな仕事を経験しながらそれを探す日々でした。
初めに警備会社を選んだ理由も、かなり漠然としていて。「警備員の統率が取れた雰囲気って、吹奏楽部と通じるところがあるな」とか、「制服が、吹奏楽部のマーチングバンドの衣裳に似ていて親しみやすい」とか(笑)。
ただ、仕事は自分に合っていたと思います。工事現場での交通整理や商業施設の警備をしていると、通行人によく道を聞かれるんです。どうしたら分かりやすく案内できるか、自分なりに接し方を工夫してみると、相手の表情がみるみる変わって。
イベント会社で勤務していた頃も含めて、尊敬できる同僚や先輩に出会えたのも大きかったですね。吹奏楽部の活動に励んでいたとき、僕がこだわっていたのは「昨日よりも今日、今日よりも明日の演奏をよくしていきたい」ということ。それと同じだな、って。働く上で大切にしていきたいことが、自分の中で自然と明確になっていきました。
情報技術に対する関心は、運営スタッフとしてIT企業の展示会などに携わる中で、大きくなっていきましたね。
不安な気持ちより
「後悔したくない」思いが強かった
― それでも、未経験でチャレンジすることに不安はありませんでしたか?
「未経験だから」と言って自分の気持ちに正直になれず、後悔することの方が怖かったです。とりあえずやってみようという気持ちで、プログラミングの参考書などを購入して勉強を始めました。
とはいえ、未経験であることに引け目がなかったわけではありません。だから、スタッフサービス・エンジニアリングの採用面接を受けたとき、担当者が気持ちを否定せずにじっくり話を聞いてくれたのがとても嬉しかったです。即戦力にならないことを責めるのではなく、決断に至った経緯や、これまでの経験で学んだことを丁寧に引き出してもらえた。前向きな気持ちになれました。
2017年7月に入社。1カ月半ほどは先輩スタッフと一緒に現場へ同行しながら、OJTでスキルを身に付けていく日々でした。独学で、IT関連の資格も4つほど取得しました。
― 積極的にスキルアップに励んでいらっしゃいますね。
スタッフサービス・エンジニアリングには、半期ごとに目標を設定し、配属先や専属のキャリアカウンセラーに評価をしてもらって次期の業務につなげていく「自己開発支援制度」があります。この仕組みがなかったとして、自己流でこうした振り返りを続けていくのはどうしても限界があるのではないでしょうか。半期で達成したい目標をまず掲げ、それを月ごと、週ごと、そして毎日の小さな「to do」につなげていく。キャリアを形成していく上で、とても助けになっています。
派遣会社に常時雇用され、企業に派遣される「常用型派遣」という働き方も、自分の希望にマッチしていると思います。イメージとしては、いわゆる正社員と派遣社員の「いいとこ取り」をしているような感覚です。
登録型派遣社員の場合、派遣先企業と派遣会社間で結ばれる派遣契約期間のみ派遣先で就業するため、人とのつながりが希薄にならざるを得ない部分がおそらくある。でも、スタッフサービス・エンジニアリングであれば、お話ししたようなキャリアカウンセリングの機会や、スキルアップのための講座なども定期的に開催されています。
一方、ニュースで長時間労働や過労などの問題を耳にするたび、ずっと1つの会社に尽くしていくような働き方は、「自分の進みたい道」ではないかな、と感じます。資格取得のための勉強も、常用型派遣として一定のプライベートな時間を確保しながら働けているからこそ、続けてこられたと思います。
苦しさを乗り越える、そのプロセスが面白い
― 今後はどのようなキャリアプランを描いていらっしゃいますか?
現在はコンピューターの点検作業が業務の中心ですが、ネットワークに関する知見をもっと身に付けていきたいですね。
興味が湧いた分野を少しずつ勉強していくのはとても楽しい。なじみのない用語や知識を、覚えるだけではなく使えるレベルまで持っていくには、もちろん苦しいときもあります。でも、そこを乗り越えて分かるようになるプロセスが面白いんです。
将来は「これだったら誰にも負けない」と思える自分の得意分野をつくりたい。そのときにきっと、この仕事に進むと決めた自分の判断は「間違っていなかった」という確信が持てると思っています。