「取り急ぎ」はNG? ビジネス会話で間違えやすい言葉遣い8選
普段なにげなく使っている言葉が、ビジネスの場では失礼にあたることもあります。たとえば、「取り急ぎ」「よろしければ」などの言い回しを仕事の場面で使うのは、実はNGです。本記事では、間違いやすい言葉遣いをピックアップし、ビジネスにはそぐわない理由、そして、正しい使い方や言い換え方を解説します。
目次
正しい言葉遣いはビジネスマナーの大前提
丁寧な言い方をしようとするあまり二重敬語になっていたり、敬語と謙譲語が混ざっていたり。周りの人たちが使っているので正しいと思っていた表現が、実はビジネス会話にはふさわしくないということもあります。
誤った敬語は、相手に不快な思いを与えたり、自身や自社の評価を下げてしまったりすることもあります。社内でも社外でもお互いが気持ち良い関係性を築けるよう、正しい言葉遣いを身につけましょう。
うっかり使っていませんか? 間違えやすい言葉遣い8選
ここでは、間違いやすい言葉遣いを8個ピックアップして紹介します。NGである理由を理解して、正しい使い方の例も押さえておきましょう。
お世話様です
・間違いの例
「お世話様です。○○社の○○です」「先日はお世話様でした」
など、電話や会話の中で日常的に使っている人も少なくないのではないでしょうか。
・なぜNGなのか
「お世話様」は一見丁寧に感じますが、尊敬語や謙譲語ではありません。感謝の気持ちとともに、目下の人をねぎらうニュアンスが含まれています。敬意がないと受け取られる場合もあるため、お客様や目上の人に使うのは避けた方がよさそうです。
・正しい使い方例
「お世話になっております」など。
謙譲表現である「お世話になっております」に言い換えるのが適切です。頭に「いつも」「たいへん」などをつけると、より深い敬意が伝わります。シチュエーションによっては、「いつもありがとうございます」と言ってもよいでしょう。
お名前を頂戴します
・間違いの例
「お名前を頂戴できますでしょうか」
電話の取り次ぎや受付などで、相手の名前を聞く必要がある場合に使うことが多いでしょう。
・なぜNGなのか
「頂戴する」は「もらう」の謙譲語であり、物に対して使います。そもそも「名前をもらう」という表現自体が正しくないといえます。
・正しい使い方例
「お名前をお伺いできますか」「お名前をお教え願えませんか」など。
相手の名前は「聞く」「教えてもらう」というのが一般的な表現で、ビジネス会話においても同様です。加えて、「恐れ入りますが」「差し支えなければ」などを言い添えると、さらに丁寧になります。
~しておきます
・間違いの例
「対応しておきます」「添付しておきます」など。
何かを依頼された際などに日常的に使っていることの多い言葉です。
・なぜNGなのか
「~しておきます」は丁寧語ですが、謙譲表現ではありません。相手への敬意が欠けていると受け取られることがあります。また、やや恩着せがましい印象があり、仕方なくしている印象を与える表現でもあります。仕事の場面で使うのは控えた方がよいでしょう。
・正しい使い方例
「~いたします」「~しておきます」など。
このように言い換えるのがもっともシンプルです。たとえば、「対応いたします」「添付いたします」で問題ないでしょう。また、「伝えておきます」は「申し伝えます」と謙譲語に言い換えると、より敬意が感じられるでしょう。
大丈夫です
・間違いの例
何かを依頼されたときに「大丈夫です」と言ったり、何かを確認されたときに「大丈夫です」と答えたりする人も多いのではないでしょうか。
・なぜNGなのか
NGである1つめの理由は、「大丈夫です」という受け答えは肯定・否定のどちらの意味にも使えるという点です。思わぬ誤解を招くこともあるため、仕事においては使わないのが得策です。
2つめの理由は、「大丈夫です」は敬語ではないため、ビジネスシーンで使うには適していないことが挙げられます。
・正しい使い方例
「わかりました」「承知いたしました」「できかねます」「遠慮しておきます」など。
依頼を了解したことを伝える際には、YESであることをはっきりと伝えましょう。さらに丁寧な表現をするなら、「承知いたしました」「かしこまりました」「問題ございません」「差し支えありません」などが適切です。
依頼や誘いを断る場合には、「できかねます」「遠慮しておきます」「必要ありません」など、相手に誤解を与えない言い方を心がけましょう。
どうしますか/どうしましょうか?
・間違いの例
「次回の打ち合わせはどうしますか」
「先方への連絡はどうしましょうか?」
など、相手の意向や都合を伺うときに社内外問わず使います。プライベートでもビジネスでも同じ表現を使っている人も多いかもしれません。
・なぜNGなのか
相手を選ばずに使える丁寧な言い回しではありますが、敬意が含まれないため、ビジネスシーンではベストではありません。加えて、「どう」という言葉自体がくだけたニュアンスがあるため、丁寧さに欠ける印象を与えてしまいます。
・正しい使い方例
「いかがなさいますか」「いかがいたしましょうか」など。
「いかがなさいますか」は尊敬語なので相手の動作に対して用います。もう1つの「いかがいたしましょうか」は自分の動作に対して(何をすべきか)を表す謙譲語になります。
取り急ぎ
・間違いの例
「取り急ぎお返事まで」「取り急ぎご報告まで」
など、メールの文末などで使う人も少なくないのではないでしょうか。
・NGである理由
表現そのものが間違っているわけではありませんが、使用に適したシーンが限られています。
たとえば、メールを受け取ったことや日程変更が生じたことなど、詳細は置いておき、至急連絡する必要がある場合。
また、「取り急ぎ」には「間に合わせの処置として」といった意味合いがあるため、お客様や上司に対して使うのは失礼と受け取られることもあります。
・正しい使い方の例
「まずは、ご報告のみにて失礼いたします」
「まずは、御礼申し上げます」など。
「取り急ぎ」を「まずは」に変え、文末を「~まで」と簡略化せず、「ですます調」できちんと書くことにより、丁寧な印象を与えることができます。
はい。そうです
・間違いの例
何かを尋ねられたとき、肯定的な意味で「はい。そうです」と答えることは多いでしょう。
・なぜNGなのか
「そうです」は丁寧語であり敬語ではないため、目上の人や取引先に対して使うのはふさわしくありません。加えて、相手に稚拙な印象を与えることもあり、ビジネスの場には適しません。また、より丁寧にという思いから「そうでございます」と使う人も見られますが、これは敬語の間違った使い方になります。
・正しい使い方例
「おっしゃる通りです」「左様でございます」
「はい。問題ございません」「ごもっともです」など。
相手の言葉に同意することを示す敬語を使います。いずれも敬意をこめつつ、肯定や賛成の意思を明確に伝えることができます。
よろしかったら
・間違いの例
「よろしかったら、ご意見をお聞かせください」「私でよろしかったら、ご案内いたします」
相手に何かを頼むときに言い添えて、やわらかいニュアンスや、へりくだった印象を与えたいときに『クッション言葉』として使う人が多いでしょう。
・なぜNGなのか
「よろしかったら」は、主に関西地方で使われる方言の1つです。言葉遣いとして間違っているわけではありませんが、仕事の場面では標準語で話すのが基本です。人によっては敬語と受け取ってもらえない場合もあるでしょう。
・正しい使い方例
「よろしければ」「もしよろしければ」など。
少しの言い換えで、目上の人にも使うことができます。「~していただけないでしょうか?」などと組み合わせると、相手に選択の余地を与えることができるという点でも、配慮があるという印象になります。また、「差し支えないようでしたら」を使えば、より丁寧な印象を与えるでしょう。
まとめ
間違って使っている人が多い、ビジネスでの言葉遣いをピックアップして紹介しました。社会に出ると、言葉遣いやマナーについてしっかりと学んだり指摘されたりする機会は多くありません。だからこそ日頃から、何が適切で、何がふさわしくないかを自身で確認することが大切です。
正しい言葉遣いは、ビジネスでの潤滑なコミュニケーションや人間関係の土台を作ります。スムーズに使えるよう、今一度見直してみましょう。