派遣スタッフも再就職手当を受給できる!受給条件や受給方法を解説

派遣スタッフも再就職手当を受給できる!受給条件や受給方法を解説

転職活動をおこなうときに知っておきたいのが、「再就職手当」の制度です。再就職手当は雇用保険の受給者が早期に再就職することで受け取れる手当ですが、一定の条件を満たすことで派遣社員も受け取ることができます。

本記事では、再就職手当の受給条件や申請方法、派遣社員でも受け取る方法について解説します。

再就職手当とは

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再就職手当とは、雇用保険から支給される「就業促進手当」のひとつです。

失業手当の受給資格がある人が安定した職業に就いた場合に受け取ることができ、基本手当の支給残日数に応じた金額が支給されます。失業した人の早期の再就職を促すための制度で、再就職までの期間が短いほど手当の金額が大きくなる仕組みです。

新たな就職先が決まっても、最初の給与まではタイムラグがあることや、場合によっては転居を伴うこともあるなど、経済的な負担が大きくなるケースも少なくありません。

再就職手当はそのような経済的負担を軽減する役割もあり、再就職後の生活をいち早く安定させることができます。

派遣スタッフでも再就職手当は受給できる

再就職手当は、派遣社員として就職した場合でも受給することが可能です。

ただし、再就職手当には「1年を超えて勤務することが確実であること」が支給条件のひとつとして定められています。一般的に雇用期間が1年以内の派遣契約は支給の対象外です。
(1年以内の雇用契約でも、労働条件通知書(兼)就業条件明示書に「契約期間延長の可能性あり」と明記されていれば対象になります。)

また、トライアル雇用や実習型、紹介予定派遣なども対象外となり受給することができません。

再就職手当を受給するメリット

失業中に雇用保険の基本手当(失業手当)を受け取る場合、「しばらくは基本手当が支給されるから、ゆっくり再就職活動をしよう」と考える人もいるかもしれません。しかし、再就職手当を受給することには主に下記のようなメリットがあります。

・再就職後の収入が安定する
・再就職活動のモチベーションアップにつながる

それぞれくわしく解説していきましょう。

再就職後の収入が安定する

再就職後の新生活では、想定外の出費が続くことも少なくありません。

例えば「再就職に伴い転居しなければならない」「スーツを数着新調する必要がある」といったケースが考えられます。新生活をスタートする喜びの一方、こうした出費の負担が重く感じられる可能性もあるでしょう。

また、再就職先での初任給を受け取るまでにタイムラグがある場合、当面の生活費に困ることも考えられます。

その点、再就職手当はある程度まとまった金額を受け取れるため、再就職後の新生活を安定させられるメリットがあります。収支バランスが大きく変化するタイミングで、まとまった収入を得られるのは大きな安心感につながります。

再就職活動のモチベーションアップにつながる

再就職手当には、再就職活動へのモチベーションをアップさせる役割もあります。

雇用保険の基本手当によって当面の生活費が確保できていると、つい再就職活動への意欲が下がるかもしれません。しかし、失業手当ですべての生活費を賄いきれないことは多く、貯蓄を切り崩すこともあるでしょう。安定的な収入が限られる中で貯蓄が減少していくのは、精神的な負担にもつながります。

一方、再就職手当は受給できる期間が限定されているうえ、早く再就職するほど支給率が高くなる仕組みになっています。

そのため、なるべく多くの再就職手当を受け取るためには、より早く再就職先を決める必要があります。早く就職先を見つけるために、職業訓練などを活用してスキルアップを目指す人も多くいます。

焦りから再就職先を探すのは適切ではありませんが、「早く再就職先を決めよう」という意欲につながる点は大きなメリットです。再就職手当をモチベーションに早く再就職先を見つけることができれば、より早期に新しい生活のスタートを迎えることができます。

再就職手当の受給条件

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再就職手当は、下記の条件を満たすことで支給されます。

①受給手続き後、7日間の待機期間満了後の再就職または事業開始であること
②失業手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っていること
③再就職先と前職との間に、密接な関わりがないこと
④離職理由によって給付制限がある人が待機期間満了後1ヶ月間に就職した場合、ハローワークまたは職業紹介事業者経由で決定した再就職先であること
⑤再就職先で、1年を超えて勤務することが確実であること
⑥原則として雇用保険に加入していること
⑦過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当を受給していないこと
⑧受給資格決定前に、再就職先での採用が内定していないこと

※参考:厚生労働省ほか「再就職手当のご案内」

なお、条件①の「7日間の待機期間」には、「アルバイトなどをすることで失業の状態でなかった日」や「失業の認定を受けていない日」は含まれません。「失業中にアルバイトをしたい」という場合は、なるべく待機期間中を避けるとよいでしょう。

また、自己都合での退職や懲戒解雇によって失業した人については、2~3ヶ月間の給付制限が設けられます。

そして待機満了後1ヶ月以内に再就職する場合、再就職手当が受け取れるのは、ハローワークまたは職業紹介事業者経由で再就職を決めたケースに限られます。以上の点に注意しましょう。

再就職手当の受給金額について

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再就職にあたって気になるのが、再就職手当の受給金額です。失業中は、雇用保険の基本手当を受け取れることから、「わざわざ再就職手当を受け取らなくてもよいのでは?」と考える人がいるかもしれません。

しかし、再就職するタイミングや賃金日額の水準によっては、基本手当よりも高い給付率が適用される場合があります。ここからは、再就職手当の受給金額の計算方法や支給金額例について確認していきましょう。

再就職手当の計算方法

再就職手当の支給額は、下記の計算式によって算出されます。

基本手当日額 × 所定給付日数の支給残日数 × 60%または70%

※参考:厚生労働省ほか「再就職手当のご案内」

このとき適用される給付率は、支給残日数によって決められる仕組みです。

所定給付日数

支給残日数

支給率60%

支給率70%

90日

30日以上

60日以上

120日

40日以上

80日以上

150日

50日以上

100日以上

180日

60日以上

120日以上

210日

70日以上

140日以上

240日

80日以上

160日以上

270日

90日以上

180日以上

300日

100日以上

200日以上

330日

110日以上

220日以上

360日

120日以上

240日以上

※参考:厚生労働省 愛知労働局 愛知ハローワーク「再就職手当について」

なお、再就職手当の算出に用いられる基本手当日額には、下記の通り上限額が定められています。

・離職時の年齢が60歳未満・・・6,395円
・離職時の年齢が60歳以上65歳未満・・・5,170円
(※2025年7月31日までの上限額)

ご自身の基本手当日額や支給残日数については、ハローワークで受け取る雇用保険受給資格者証に記載されていますので確認してみましょう。

再就職手当の支給金額例

では、実際にどれくらいの再就職手当が受け取れるのでしょうか。先ほど紹介した計算式をもとに、再就職手当の支給金額をシミュレーションしてみましょう。

【シミュレーション①】

基本手当日額:4,000円
所定給付日数:240日
支給残日数:200日
支給率:70%

再就職手当:4,000円 × 200日 × 70% = 56万円

このケースでは、所定給付日数240日に対して支給残日数200日時点で再就職しているため、70%の支給率が適用されます。したがって、合計56万円の再就職手当を受け取れる計算です。

【シミュレーション②】

基本手当日額:4,000円
所定給付日数:240日
支給残日数:90日
支給率:60%

再就職手当:4,000円 × 90日 × 60% = 21万6,000円

先ほどのケースと基本手当日額と所定給付日額は同様ですが、支給残日数が90日となっているため、支給率は60%が適用されます。したがって、再就職手当は合計21万6,000円となります。

再就職手当は再就職が早いほどお得な制度

前述のシミュレーションでも分かる通り、再就職手当では再就職するタイミングが早いほど適用される給付率が高くなります。

また、再就職手当の受給には「所定給付日数の3分の1以上の支給残日数があること」が条件となっているため、基本手当の受給が終わりに近づくタイミングで再就職した場合は、再就職手当を受け取ることができません。

つい「雇用保険の基本手当を受け取れるうちは、次の就職先についてゆっくり考えよう」と思いがちですが、基本手当を受け取るよりも再就職手当を受け取ることを優先するのもひとつの方法です。

再就職手当の受給方法

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再就職手当は、ハローワークにて申請手続きをおこなうことで支給されます。ここからは、再就職手当を受け取るまでの流れや申請期限について確認していきましょう。

再就職手当の支給申請の流れ

再就職手当の支給申請は、所轄のハローワークあてにおこないます。支給申請に必要なものは下記の通りです。

・再就職手当支給申請書
・再就職の証明書
・雇用保険受給資格者証
・紹介証明書(給付制限の1ヶ月以内に職業紹介事業者の紹介で再就職した場合)
・失業認定申告書

また、申請手続きは下記の流れに沿っておこないます。

①ハローワークへ採用証明書を提出する
②「再就職手当支給申請書」を受け取る
③「再就職手当支給申請書」を再就職先に提出し、必要事項を記入してもらう
④「再就職手当支給申請書」と「雇用保険受給資格証」をハローワークへ提出する

再就職手当支給申請書や再就職の証明書には、雇用主である事業者側で記入してもらう箇所もあります。再就職後はすみやかに申請手続きを進めましょう。

申請手続きを終えたら、およそ1ヶ月~1ヶ月半ほどで再就職手当が支給されます。

なお、再就職手当の支給申請は電子申請にて提出することも可能です。くわしくは所轄のハローワークへ確認しましょう。

再就職手当の申請期限

再就職手当の支給申請は、再就職した日の翌日から1ヶ月以内が申請期限となっています。

前述の通り、再就職手当の支給申請には自分で記入・作成する書類だけでなく、再就職した先の事業主に記入を依頼する箇所も多くあります。

再就職後は仕事に慣れることに精一杯で、つい手続きを忘れてしまうかもしれません。「時間ができたら書類を準備しよう」と考えていると、あっという間に申請期限が到来してしまうことも考えられます。

期限内にスムーズに申請手続きを進めるためには、事前にどのような書類が必要となるかをしっかりと確認しておくことが大切です。

なかなかハローワークへ出向く時間が作れない場合は、電子申請の活用も検討するとよいでしょう。

厚生労働省職業安定局雇用保険課 都道府県労働局・ハローワーク「雇用保険関係手続き 電子申請のご案内」

就職から2年間は支給申請が可能

再就職手当の支給申請は「再就職した日の翌日から1ヶ月以内」という申請期限が定められているものの、実は時効の範囲内であれば支給申請をおこなうことができます。

再就職手当の支給に関する時効は、「再就職した日の翌日から2年を経過する日」です。

もし申請期限を経過した場合でも諦めるのではなく、支給申請がおこなえるかどうかをハローワークに問い合わせてみるとよいでしょう。

しかし、申請期限を過ぎた後に支給申請をおこなうと、再就職手当が支給されるまでに時間がかかる可能性があります。2年間の時効はあるものの、よほどの事情がない限りは申請期限内に手続きをおこなうようにしましょう。

再就職手当を受給できないケース

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再就職を支援するために支給される再就職手当ですが、下記のようなケースでは支給が認められないことがあります。

・支給残日数が不足している
・雇用形態や期間が支給条件を満たしていない
・離職前と同じ企業に再就職をした

それぞれ代表的な例を紹介しましょう。

支給残日数が不足している

再就職手当では、「所定給付日数の3分の1以上の支給残日数があること」が支給の条件となっています。

例えば、所定給付日数が180日の場合、再就職手当の支給を受けるには60日以上の支給残日数が必要となる仕組みです。

そのため、基本手当の支給が終わりに近づくタイミングで再就職した場合には、再就職手当を受け取ることができません。

なお、所定給付日数は離職理由や年齢、被保険者であった期間などによって決められます。例えば、特定受給資格者の所定給付日数は下記の通りです。

被保険者であった期間

1年未満

1年以上
5年未満

5年以上
10年未満

10年以上20年未満

20年以上

区分

30歳未満

90日

90日

120日

180日

-

30歳以上
35歳未満

120日

180日

210日

240日

35歳以上
45歳未満

150日

240日

270日

45歳以上
60歳未満

180日

240日

270日

330日

60歳以上
65歳未満

150日

180日

210日

240日

厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

再就職手当の支給を希望する場合は、自分の所定給付日数を確認したうえで「いつまでに再就職すれば給付の対象となるか」を正確に理解しておきましょう。

雇用形態や期間が支給条件を満たしていない

再就職手当の支給には、再就職した先の雇用形態や期間についても条件が定められています。

例えば、再就職手当は派遣社員として再就職した場合でも受け取ることができますが、その際は「1年を超えて勤務することが確実であること」が条件となります。そのため、あらかじめ派遣期間が1年以内と決まっている場合は、支給を受けることができません。

そのほか、雇用期間が1年以内となっていて「更新するためには営業目標を達成する必要がある」といった条件が定められている場合も、支給の対象外となります。

離職前と同じ企業に再就職をした

再就職手当では、離職前と同じ企業に再就職した場合は支給が認められていません。また同じ企業でなくても、離職前の事業主と資本・資金・人事・取引面で深い関わりがある企業に再就職した場合も、支給の対象外となります。

例えば、定年退職後の再就職では「関連会社に再就職した」「取引先から声がかかって再就職した」というケースが多くあります。しかし、離職前の事業主と密接な関わりがあると判断された場合は受給することができませんので、注意が必要です。

まとめ

再就職手当は、早期の再就職を支援するための制度です。失業中は基本手当を受け取ることも可能ですが、早く再就職すると基本手当よりも高い給付率が適用されるケースもあります。

また、再就職手当は一定の条件を満たすと派遣社員でも受給することが可能です。

基本手当の受給期間中は「ゆっくり再就職先を探そう」と思う可能性もありますが、再就職手当を受けることも検討してみましょう。

ライター:椿 慧理
フリーライター。新卒後に入行した銀行で10年間勤務し、個人・法人営業として金融商品の提案・販売を務める。現在は銀行で培った多様な経験を活かし、金融・人材ライターとして幅広く活動中。2級ファイナンシャル・プランニング技能士、1種外務員資格、内部管理責任者資格を保有(編集:株式会社となりの編プロ)

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